平成29年度 高度専門職業人養成機能強化促進委託事業

MICE・地方観光人材育成プログラム〜持続的な発展を目指して

ケース開発case-development

本プログラムは、基本的に座学+ケーススタディで授業を進めます。
本プログラムの新設5科目(「ホテルマネジメント」「地域観光」「サービス・マネジメント」「インバウンド・マネジメント」「ソーシャル・マネジメント」)で取り扱うケースの概要は以下のとおりです。

株式会社四万十ドラマ

株式会社四万十ドラマは、高知県西部を流れる四万十川中流域を拠点として活動する地域商社である。地域商社とは、地域経済を活性化するために特産品はじめ観光資源なども含めて地域を丸ごと国内外に売り込む企業や団体のことをいう。同社は、栗や茶等の四万十の農産品の出口(販路)を開拓し、納品形態に合わせた簡単な加工を地域内で行うことで、産業を興し雇用を創出し、四万十の産品をブランド化することによって地域振興のけん引役を担ってきた。四万十ドラマのこれまでの活動が評価され、2006年度には農林水産省「立ち上がる農山漁村」に認定、以来、数々の賞を受賞し、地域振興の先進地として認められている。本ケースでは、人口約2,700人(2017年6月末現在)の中山間地域に産業を興し、年間約15万人を呼び込む四万十ドラマの事例から、地域振興の中心であると同時に地方観光の核となる組織のマネジメントについて実践的な課題を検討する。

山陰インバウンド機構

山陰インバウンド機構は、「観光地経営」の視点に立った地域づくりの舵取り役を担う日本版DMOとして登録された法人である。山陰エリア(島根県・鳥取県)における観光ブランドの構築、データマーケティング、海外に向けた山陰の観光情報の発信など観光振興に取り組んでいる。広域観光周遊ルート形成計画についても認定され、外国人誘客への取組みを進めている。一方、観光地域づくりに関する多様な関係者の合意形成やデータマーケティング戦略の策定、KPIの設定・PDCAサイクルの確立など、日本版DMO登録要件を維持するための継続的な取組みが求められている。2020年に山陰両県の外国人延べ宿泊者数40万人泊(現状の2.7倍)になると予想。他にも観光資源の磨き上げや受け入れの環境整備、将来的な安定的資源の確保など解決すべき問題もある。本講義では、山陰インバウンド機構を取り巻く様々な環境を考慮しながら観光地経営に資する意思決定について議論を行う。

モンサンミッシェル

モン・サン・ミシェルは、サン・マロ湾に浮かぶ岩山に建てられた礼拝堂から発展した巡礼地である。モン・サン・ミシェルを囲む小さな湾にはクエノン川、セリューヌ川、セー川の3本の川が流れ込んで堆積した砂が砂州を形成しているが、1879年にカゼルヌからモン・サン・ミシェルまでの約2kmにわたって道路が建設された結果、川の流れが河口近くで弱まってしまい、クエノン川が砂で埋まり始めた。道路建設から100年後には2mの砂が湾内に堆積し、「2040年頃にはモン・サン・ミシェルの周囲は砂で埋まってしまう」という専門家の見解が示された。観光業を国の重要な産業として位置づけているフランス政府は、EUおよびノルマンディー地域圏、ブルターニュ地域圏と共同で、モン・サン・ミシェル湾の再開発プロジェクトを立ち上げた。本ケースでは、モン・サン・ミシェルが取り組んだ修景事業が、持続可能な観光開発であると同時に、観光地のブランド価値および観光の経験品質を向上させる一つの手法であることを示し、他地域への応用可能性について考察する。