戦略的大学連携支援プログラム セミナー
“Qualcommのグローバル戦略”
2011年3月7日(月)19:00~20:30 関西学院大学大阪梅田キャンパス
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山田 純 クアルコムジャパン株式会社・代表取締役会長兼社長 |
携帯電話は急速に通信速度とデータ処理能力を高め、個人が常に身につけて使用するパソコンのようなものになりつつあります。クアルコムは、通信技術とチップセットで業界をリードし続けるべく、技術開発に邁進してきましたが、技術に加えて重要な要件としてビジネスモデルがあります。今後クアルコムが押し進めるビジネスモデルは、アジア抜きには語れません。クアルコムとアジアの関係が引き金となって、携帯電話の世界がどのように変化しつつあるのかに関して講演が行われました。
Qualcomm社は、1985年7月にカリフォルニア州サンディエゴ市にIrwin Jacobs(アーウィン・ジェイコブス)博士を中心にした7名によって設立されました。社名の由来はQUALity & COMMunicationsから来ています。創業当初、何も売るものはなく、あったのはデジタル無線通信分野で革新を起こそうという「意欲」と「知識」だけでした。1988年にCDMAのコンセプトを発表してからの5年間は、サイドビジネスで会社を維持しながらCDMAの技術開発が行われました。「CDMAは移動体通信では動かない」と言われながらも、多大な労力を費やして動くことを証明し続けるという努力が実り、1993年に標準規格として採択され、1995年に香港で最初のサービスを開始しました。その後、1996年に韓国および米国でサービスが開始され、1998年にようやく日本でサービスがスタートしました。現在ではウィルコムを除く通信事業者がCDMAを採用するに至っています。
1985年:Irwin Jacobsを中心に7名でクアルコム設立
1988年:CDMAのコンセプトを発表
1989年:サンディエゴでのフィールドデモを実施
1993年:TIA(米国通信工業会)がCDMAを標準規格として採択
1995年:世界初のCDMAのサービスが香港で開始
1996年:韓国及びアメリカでCDMAのサービス開始
1998年:日本のKDDI社がCDMAのサービス開始
1999年:3Gの基本技術がCDMAに決定
1999年:基地局部門をエリクソン社へ売却
2000年:携帯電話部門を京セラ社へ売却
2000年:世界初の3GサービスCDMA2000が韓国で開始
2001年:世界初のWCDMAサービスをNTTドコモ社が開始
2010年:世界の3G契約数が10億を突破
CDMAは、Code Division Multiple Access(符号分割多元接続)の略で、スペクトラム拡散を基盤技術とします。CDMA方式は、広い周波数帯域の電波を、隣接する複数の無線基地局や複数の移動機で共有できます。移動機に割り当てたPN符号と呼ぶ特殊な波形によって、混ざり合った信号の中から特定の移動機のデータを取り出します。CDMA方式は第3世代携帯電話の主流となっており、W-CDMAやCDMA2000に使われています。
従業員数:17,500名(2010年9月期)
事務所数:全世界で139ヶ所(2010年9月期)
ライセンシー:190社以上(2010年12月現在)
売上高:US$109.91億=9,342億円(2010年9月期)
2010年9月期事業部門別売上構成比:半導体部門(QCT)が全体の6割以上
2010年9月期地域別売上構成比:アジア地域が全体の3/4以上を占める
最終製品を提供せず、CDMA/WCDMA OFDM/OFDMAなど無線通信技術に関する研究開発、半導体及びソフトウェアの開発の販売、ライセンス供与などを行います。技術開発(半導体・ライセンス・サービス・アプリケーション)が事業のベースであり、そのブラックボックス化された開発成果をワイヤレス業界へ幅広く提供しながら、継続的に研究開発に再投資する循環型ビジネスモデルです。エンドユーザが支払った代金が、最終的にロイヤリティとしてフィードバックされます。ロイヤリティのレートは5%です。
“イネーブラーな事業モデル” と称されている同社は、1995年から2000年までの5年間は、携帯電話および基地局そのものも生産していましたが、2000年に端末事業部門は現在の京セラに、基地局部門は現在のエリクソンに売却しました。最終商品を持たず、メーカーという立場を捨てて、技術開発と半導体の提供のみで事業を発展させられるのかという大きな議論がありましたが、技術を尊ぶ創業者精神を大事にして決断しました。当時はこのようなビジネスモデルをもった通信業界の企業は存在しませんでした。ブラックボックス化された商品と巧みに考え抜かれた事業システムの差別優位性が、競争戦略の要です。
無線通信技術とデジタル技術の継続的な進化や、スマートフォン・タブレットなどのスマートデバイスによる新たな市場、そして携帯電話以外の機器へのワイヤレス通信機能の搭載等により、世界の3G契約数は今後も急速に拡大すると予想されています。特にアジアを中心とする新興国市場での3Gの拡大が見込まれており、現在、売上の70%はアジアで占められています。
この事情を背景として、最近では、中国、台湾、韓国にこのビジネスモデルを模倣した会社が出現してきています。あるレベルに発展し、需要が見込まれる模倣可能な技術、例えば半導体チップをベースにした半完成品をDistributorや販売店に低コストで提供するようなビジネスを行う会社です。製品のコモデティー化を促進していくので、今後のアジア各国のチャレンジャーの動向は、Qualcommの持つ技術開発と保有技術の優位性持続に脅威となっていく可能性があります。